「いつまでも家族には元気でいてほしい」と願っていても、いつなにが起こるかは誰にも分かりません。
そして、葬儀の際は葬儀代以外にもさまざなま費用が発生します。
もしものときに焦らないよう、葬儀にはどのくらいの費用が発生するのかを知っておきましょう。
事前に知っておきたい助成金の制度についても、あわせてご説明します。
葬儀にかかる平均費用は?
まずは、葬儀にかかる費用の相場を見てみましょう。株式会社鎌倉新書が過去2年半以内にお葬式をしたご遺族に対して行なった「第3回 お葬式に関する全国調査」(2017年)では、葬儀費用の全国平均は1,171,111円であると示されています。
ただし、この数字には飲食や返礼品にかかる費用、お布施は含まれていません。
飲食費の全国平均は292,946円、返礼品は318,459円となっており、先ほどの金額と合わせると1,782,516円となります。
さらにお布施のことも考えると、余裕をもって200万円ほど用意しておく必要があると言えるでしょう。
なお、宗教に関わらず僧侶・神父・神官に対する謝礼は用意しておかなければなりません。とくに仏教の場合、お布施だけでなく戒名やお経に対する費用も発生します。
金額には個人差がありますが、15~30万円ほどかかるケースが多く見られます。
葬儀社から請求される金額には含まれていないため、葬儀代以外のお金も頭に入れておきましょう。
また、この調査の結果では、葬儀の種類の割合も示されています。最も多いのは一般葬(52.8%)で、次いで家族葬(37.9%)、1日葬(4.4%)、直葬・火葬式(4.9%)という順番です。
2015年の調査結果と比較すると一般葬は6.1%減少し、反対に家族葬が6.6%アップしています。
あまり大規模な葬儀をするのではなく、限られた会葬者だけで挙げるケースが増えている傾向がうかがえますね。
葬儀の種類によっても費用が左右されるため、事前に「もしものときは、どのような式にするか」を話し合っておくのもいいでしょう。
どんな給付金制度があるの?
葬儀に200万円近くもかかるとなると、「そんな大金を急に用意できない…」と感じた人も多いのではないでしょうか。
香典で多少はカバーできるとはいえ、費用全額を補うのは難しいでしょう。
そこで、国や行政機関から受け取れる給付金を活用し、葬儀費用の負担を少しでも和らげる手段を知っておくことが大切です。
この「給付金制度」にはいくつかの種類があり、金額や条件に違いがあります。では、1つずつチェックしてみましょう。
国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入している被保険者が死亡した場合は、葬儀を行なった方に「葬祭費」が支給されます。
申請期限は「故人の死亡日から2年以内」と定められており、亡くなった方の保険証の返却・変更の手続きをした際に受け取ることができます。
その支給金額は、自治体によってさまざま。ちなみに、東京都新宿区は7万円、大阪市は5万円となっています。分からないことがあれば、市や区役所の保険年金課に聞いておくとスムーズですよ。
また、健康保険に加入している人、またはその被扶養者が死亡した場合は、「埋葬料」が支給されます。金額は上限5万円までの実費精算となっており、死亡日から2年間以内に手続きをしておきましょう。
葬祭費とは異なり、全国健康保険協会が管轄しています。 なお、埋葬料の申請人がいない場合は、葬儀施行者に埋葬費が給付されます。
そして、公務員・教員の人には、社会保険制度の共済組合に加入していた場合に限り「埋葬料」「家族埋葬料」のいずれかが支給されます。金額は5万円で、死亡日から2年以内に申請する必要があります。
なお、国家公務員なら共済組合から「5~27万円」の葬祭費が支給されます。申請先は、務員・教員・国家公務員いずれも各共済組合です。
弔慰金がもらえるケースも
勤め先によっては、会社から弔慰金が支給されるケースがあります。これは一般的な香典と異なり、福利厚生の1つの制度としている会社がほとんど。
「亡くなった人の功労に対して」「遺族へのお見舞いとして」という意味合いが込められています。勤務している本人だけでなく、両親や配偶者、子どもなどが亡くなった場合に支給されることも多いです。
また、これは死亡したときに受け取る「死亡退職金」とは異なる存在です。死亡退職金は非課税枠を超えた分が相続税の課税対象になる一方、死亡弔慰金は相続税法による弔慰金相当額の範囲内はすべて非課税に。
死亡弔慰金を死亡退職金として扱ってしまうと、支払う必要のない相続税まで支払うことになるので注意しておきましょう。
気になる金額ですが、勤め先や勤続年数などによって大きな差があります。なかでも死因が業務上の原因であるときは、「普通給与の3年分に相当する額」という高い金額が「続税法による弔慰金相当額」と定められています。
また、業務上の死亡ではない場合は「普通給与の半年分に相当する額」です。必ずしもこの金額であるとは限らないため、あくまでも目安として捉えておきましょう。
葬儀保険も存在する
さまざまな助成金の制度や弔慰金が存在するとはいえ、葬儀には多くの出費が伴います。そこで、葬儀保険に加入しておき、いざというときに備えておくという方法も視野に入れておきましょう。
葬儀保険を扱っている会社は複数あり、いずれも葬儀費用の負担を和らげるのための「少額短期保険」となっています。
保障される金額は最大300万円で、保険期間は1年間のみ。医療保険のような厳しい書類審査はなく、簡単な告知審査だけで契約できることがほとんどです。なかには、告知が不要な保険もありますよ。
タイプは大きく分けて、「保険金定額タイプ」「保険料一定タイプ」の2つに分かれています。保険金定額タイプは、被保険者の年齢が上がるほど保険料もアップする仕組み。
高齢になるほど葬儀が発生する確率が高くなるため、どうしても保険料の負担も増えてしまうのです。
お財布への負担は大きいですが、葬儀にかかる費用をしっかり抑えておきたい人には向いていると言えるでしょう。
一方、「保険料一定タイプ」は年齢に関わらず毎月の保険料が一律になっています。ただし、葬儀代に対する保険金は年齢が上がるほど減っていく仕組み。
保険金の支出は抑えられますが、年齢が高まるにつれて「葬儀保険とは別に葬儀代を備えておいた方がいいかもしれない」という気持ちが高まるかもしれません。
なお、受け取れる保険金は30~60万円ほどの商品が多く、毎月の保険料は高くても数千円であるケースがほとんど。
新規加入は75~80歳くらいまで、契約の更新ができるのは99歳までという年齢制限を設定している保険会社が多いので、安心して長生きできますね。
まとめ
葬儀代の全国平均は約117万円。飲食や返礼品、お布施にかかるお金を踏まえると、200万円近くの費用が発生してしまいます。葬儀の規模やプランによってはさらに多くの費用がかかるため、事前に「どのように備えておくか」「どのくらいの規模の式にするか」などを考えておく必要があるでしょう。
また、葬儀費用の負担を少しでも軽減させるため、助成金制度もしっかり活用しておきましょう。ただし、助成金には申請期限が設定されています。家族に不幸があった際はバタバタしがちですが、忘れずに申請してくださいね。