金融機関が扱う口座のひとつに「貯蓄口座」があります。
本来は効率よく貯金をするための口座ですが、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。100万円を貯金しやすい口座なのでしょうか。
普通預金口座や定期預金口座とは何が違うのかも踏まえてご紹介します。
この記事の内容
貯蓄口座とは?
お金を預ける口座には、普通預金口座や定期預金口座などさまざまな口座が存在します。しかしこれらは聞いたことがあっても、「貯蓄口座」は聞き慣れない方がいらっしゃるかもしれません。
貯蓄口座はその名のとおり、貯蓄を目的とした口座です。お金を普通預金口座に入れておくと、生活費に交際費に、あるいは欲しい物の購入代金にと、いつのまにかお金がなくなっている経験はないでしょうか。人はあればあった分だけ使ってしまうものです。
この点、普通預金口座と別に貯蓄口座を作っておくと、「生活に必要なお金」と「貯金に回すお金」を分けて管理することができます。貯金をしたいと考えている方ほど、貯金に特化した貯蓄口座を作っておく意味があるでしょう。
普通預金口座に入れておいても一定の金利が適用されるだけですが、貯蓄口座では残高に応じて金利が上がる仕組みになっています。多くの金融機関では最初に金利が変わる基準が10万円以上となっており、その後は30万円、50万円、70万円、100万円といった基準でステップアップするように金利が上がっていきます。
貯蓄口座には、残高によって金利が変わる「金額階層別金利型」や、一定額を超えると普通預金口座よりも高い金利になる「金額別金利型」があります。元本も保証されますので、投資商品のように元本割れのリスクがありません。預金保険制度の対象ですので、万が一金融機関が破たんしたときでも1000万円とその利息は守られます。
普通預金口座との違い
一般に、貯蓄口座の金利は普通預金よりも高くなります。したがって、今すぐに使わないお金を普通預金口座に入れっぱなしにしておくよりは、貯蓄口座に入れておくとお金が増えることになります。
また、貯蓄口座は、普通預金口座のように、公共料金の支払いやクレジットカードの引き落とし、給与の振込先口座としての指定など、定期的な支払いは受け取りには利用できません。
なお、貯金のための口座という点では定期預金と同じですが、定期預金は満期まで解約できず、やむをえず解約する場合は金利が下がってしまいます。このデメリットを解消したのが貯蓄口座で、普通預金口座のようにいつでも自由に引き出しできます。定期預金のような満期という考え方もありません。
貯蓄口座のメリット
貯蓄口座のメリットのひとつは流動性です。
キャッシュカードなどを使っていつでも自由に引き出しできるため、突発的にまとまったお金が必要になったときに慌てずに済みます。
お金を貯めやすいながらも流動性が高いという点が、貯蓄口座の登場当初はかなり注目されていました。加えて普通預金と比べれば高金利である点もメリットでしょう。
また、貯金がなかなかうまくできない場合は、ある程度強制的に貯金しやすい点もメリットになります。
貯蓄口座から頻繁に出し入れして残高が減ると金利が下がってしまうため、お金を使いたくても我慢しようという気持ちになるからです。
金額階層別金利型を選べば、貯金額が増えるごとにステップアップするように金利も上がっていくため、貯金のモチベーションになります。
「もう少し貯めれば金利が上がる」と思えば貯金を頑張れるかもしれません。
スイングサービスを利用すれば、先取り貯金もできます。これは普通預金口座と貯蓄口座を連動させたサービスで、指定した日の普通預金口座残高が一定額を超えると、超えた分を自動的に貯蓄口座に振り替えられる仕組みです。
この方法なら、普通預金口座に給与が振り込まれたタイミングで貯蓄口座に振り替えさせ、「先に」貯金ができます。
普通預金に残った分は、その月に使える生活費としてやりくりすればよく、自動的に貯金ができるため、手間をかけずに貯金をしたい方に向いています。
生活費を使ってしまってから残った分を貯金するより強制力もはたらくでしょう。
貯蓄口座のデメリット
貯蓄口座は、一定額以上の残高であることを条件に普通預金よりも高い金利が適用されます。したがって、残高が一定額よりも少なくなると、普通預金と同じか、それより低い金利になってしまいます。
一定以上の額をキープできる人にしか向いていない口座だということです。
また、普通預金口座に入れた場合と比べて高金利とはいっても、残念ながら昨今は超低金利の時代ですので、どんなに優遇された金利といってもたかがしれています。
仮に金利が0.01%だった場合、貯蓄口座としては金利が高い部類に入ると考えられますが、100万円預けても100円の利息しか受け取れない計算になります。つまり、お金を「増やす」という点においては、現在のところ、ほとんどそのメリットが失われているといってよいでしょう。
「今すぐに使わないお金を安全に、1円でも多く増やしたい」と考える方がいるかもしれません。その場合でも、貯蓄口座の金利はもともと定期預金より低く設定されているため、貯蓄口座よりも定期預金口座に入れるほうがお金が増える可能性が高いともいえます。
さらに、普通預金口座のように、公共料金やクレジットカードの自動支払いや給与の自動受け取りといった決済機能がついていないため、利便性という点でもデメリットになるでしょう。
100万円貯金を目指すなら貯蓄口座を使うべき?
ここまでお伝えしたように、貯蓄口座は、普通預金口座と定期預金口座の中間のような口座です。以前は、普通預金口座のように流動性があり、かつ普通預金口座よりも金利が高いという大きなメリットがありました。本来は「いいとこどり」ができる口座だったのです。
しかし金利が低い異常事態ともいえる昨今では、そのメリットはなくなりつつあります。階層ごとの金利にほとんど差がない金融機関も多いため、残高が増えても金利が大きく上がるといったケースも少なくなっています。もしも「少しでも高い金利でまとまったお金を預けたい」とお考えなら、定期預金を選ぶほうが利息面で優遇されやすいでしょう。
まとまったお金はないが金利の高い口座に預けたい場合でも、積立定期預金を利用すれば毎月コツコツと一定の金額を積立できます。積立定期預金の場合は解約や一部引き出しも可能なので、流動性があり便利です。
また、定期的な支払いや受け取りができず利便性が低いという点で、普通預金口座とたいして変わりがないと考える人も増えています。「どの口座に預けても金利のメリットが低いのであれば金利は気にしない」という方も多いでしょうが、そうであれば何にでも使いやすい普通預金で十分ではないかというわけです。
ほかの口座も含めて検討しよう
生活口座と分けられる点に着目して貯蓄口座を利用するのは、選択肢のひとつではあるでしょう。しかしお伝えしたとおり貯蓄口座は大きなメリットがなくなっているため、貯金を考えている方はほかの口座も検討する余地があります。
ネット銀行を中心とする新しいタイプの銀行では、大手銀行の貯蓄口座を上回る普通預金口座、定期預金口座が用意されています。多少のリスクをとってでもお金を増やしたい方には、運用をプロに任せられる投資信託口座にお金を預ける方法もあります。
強制的に貯金ができるという点についても、金融機関の自動振替サービス、会社の財形貯蓄、積立定期預金といった方法でカバーできます。
まとめ
貯蓄口座は貯金に回すお金を生活費と別に管理でき、貯金の手間がかからないというメリットがあります。一方で、お金を増やしたり、便利に使ったりという点ではほかの口座に軍配が上がります。ご自身にとってのメリットは何かを整理しつつ、貯蓄口座を利用するか、ほかの口座を利用するかを検討してみてはいかがでしょうか。